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武甲山に登る [登山]

 秩父に武甲山という山がある。この山の存在を、実は最近知った。知ったきっかけは、NHKの「ブラタモリ」という番組だった。(注1)7月15日の放送(第79回)で「秩父」が取り上げられたのだった。この山から採掘される石灰岩がセメントの原料になり、日本の高度経済成長を支えた。特に都心の近くに武甲山があったというのは、輸送面で大変幸運なことであったという。

「そう言えば『秩父セメント』って会社があったな。つまりそういうことか」なんて思いだした。(注2)そんな有名な山を今まで知らなかったのは、不思議でもあり、ちょっと恥ずかしくもあった。それ以来、ずっとこの山に登ってみたいと思っていたところ、9月(9日)の定例山行で、この山に登る機会に恵まれた。

 下の写真は、武甲山を北側から見たもの。近くから撮った写真なので、ちょっと見にくいが、石灰岩の採掘で、段々畑のような模様がついた、異様な姿である。こんな姿の山は初めて見た。
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***(以下はブラタモリの受け売り)
 武甲山というのは、北側半分が石灰岩、南側半分が玄武岩でできている。石灰岩はサンゴ礁が変化したもの、玄武岩は火山が噴火したときにマグマが冷えたものであり、そういう地質は、活火山のない埼玉県には本来有り得ないものである。
 実はこの山はもともと、太平洋の真ん中にあった海底火山であって、噴火が終わったあとで、そこにサンゴ礁が発達し、それがやがて石灰岩に変わった。その山が太平洋プレートの移動により日本列島に顔を出した。かかった時間がなんと2億年。
 武甲山で石灰岩の採掘が本格的に始まったのは大正時代になってからで、それ以来現在に至るまで、5億トンの石灰岩が採掘されている
***(受け売りここまで)

 頂上の展望台からは北側を見下ろすことができるようになっているが、安全のためフェンスで仕切られていて、山肌の採掘現場はよく見えなかった。
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 下の写真は武甲山を南側から見たもの。こちらから見ると、緑の残る形の非常に良い山だった。
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 武甲山の石灰岩はまだ枯渇する様子がない。自然の巨大さには驚くばかりであるが、それでもやがては枯渇するときがくるだろう。そのとき、武甲山は北側半分がなくなってしまうわけである。それでいいのだろうか・・・。武甲山の山肌を削るのは、自然破壊であることに間違いはないのだけど、破壊という言葉にはネガティブなイメージがある。やってはいけないことをやっているのか・・・。 ・・・なんて考え始めると、天然資源と人間の関係という、実に深いテーマになる。

 つまり、石灰石を武甲山から採掘するのが「悪い」となったとしても、ビルを建てるにはセメントが必要なわけで、では原料をどこから持ってくればいいのか。よその国から輸入するとしても、その国は自分の国の山を削ることになる。「秩父の自然を破壊するのは駄目だが、よそなら破壊して構わない」と言うのは、ずいぶんと身勝手な話である。「だったら武甲山を削れ」ということになるだろう。

 天然資源というのは、多かれ少なかれそんな問題を抱えている。大自然をそのままに保とうとすれば人間は「人間として」生活できない。どんな未開な民族であってもそれなりに、自分の都合にあわせて自然を作り変えるものである。山を切り開いて平地を作り、村を作ったり、田や畑を作ったりする。その延長線上に、現代の都市開発や資源の採掘がある。

 適度なら自然の利用。やりすぎたら自然の破壊。このバランスをとるのが実に難しい。しかも時代によって人間の価値観が変化する。今、この時代に行政が「これから武甲山の山肌を削りますよ」と計画を出せば、地元住民が断固反対を叫ぶだろう。しかし実際に採掘が始まった大正時代、おそらく地元の人達は、そこで仕事にありつけて収入が増えて、生活が豊かになることを喜んだであろうことは明らかで、武甲山がどんな姿になるかなんて考えていなかったと思う。あるいは考えた人がいたとしても、その時代を支配する「空気」があって、口に出せる状況ではなかっただろう。

 そのうちセメントの代替材料の研究が進んで、武甲山から石灰岩を採掘する必要がなくなるときがくるのかもしれない。僕としてはそうなることを望む。武甲山を掘り尽くせば他の山を掘らねばならなくなるのだから。人間の英知による科学技術の進歩に期待しよう。

 なお、YouTubeに武甲山の全景がわかる動画があったのでリンクする。この動画がいつまであるか保証はないが参考まで。



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(注1)「ブラタモリ」製作チームは、地質学の社会への普及に貢献した業績が認められて、2017年に日本地質学会から表彰されたそうである。

(注2)セメント業界は、いろいろな会社が、合併統合を繰り返して社名が目まぐるしく変わっているようだ。僕が過去に聞いた「秩父セメント」という会社は、現在は「太平洋セメント」という会社になっているらしい。


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コメント 2

るるぶぅ

珍しく、いち早くブログアップをキャッチしました(笑) 武甲山私も考えたことがあります。秩父ですよね。この前両神山に登った時に、近くにありました。北側と南側の山肌が全く違うなんて、ますます興味をそそりますね。いつか行きたいです。自然と人間の共存、考えさせられますね。
by るるぶぅ (2017-09-25 20:25) 

ひぐらし

るるぶぅさん、こんにちは。ここまで露骨に削られている山って、どこを探してもないのではないかと思います。グーグルの地図で検索すると、航空写真を見ることができます。すごい写真ですよ。動画によるとあと70年は採掘を続けるということです。もう、ここまで来たらあとは、削ったあとのこの山をどうやって利用するか、70年かけて考えるしかないと思います。たとえば天然資源のテーマパークを作るとか。(笑)
by ひぐらし (2017-10-01 18:13) 

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