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昔の天文ガイド ~Fさんに感謝~ [天文]

 今年の1月から2月にかけて、「僕が天文少年だった頃」というシリーズものの記事を書いたところ、そのうちの1つに、横浜市在住のFさんという人から「昔の天文ガイドを創刊号から約30年分もっているので、もしよかったら差し上げます」というコメントをいただいた。2つ目のコメント(後日消去)にメールアドレスが書かれていた。

 
 すごい話だと思ったが、正直なところ最初は迷った。ブログに書いた通り、僕は過去の3年分(1975年、1976年、1977年)を購入したが、それは思い出探しのためだった。質問コーナーに自分の投稿した質問が採用されたのを探したかったという、ただそれだけのことである。1977年の9月号にそれを見つけた時点で目的は達成し、それ以上は不要になったのだった。

 いろいろ考えた。きちんと考え方を決めておかなければ文字通り宝の持ち腐れになってしまう。すぐに思い浮かんだのは今設計している望遠鏡の資料探しである。それからもうひとつ気づいた。この雑誌を創刊号から見ていくことによって、日本のアマチュア天文家が昔からどんなことをしてきたのかという、一種の文化史のようなものが見えてくるのではないか。これを調べてみるのは面白いかも知れない。

 もらうことに決め、Fさんに「ありがたくいただきます」とメールを送った。僕は車を持っていないので友人の車を借りてFさんの自宅まで行こうかと思っていたが、「実家から車のトランクに積んで持って来て、積んだままになっているからそのままそちらに運ぶ」と言ってくれた。

 5月12日の日曜日、約束通りFさんは僕の家まで車を運転して来てくれた。運び込まれた30年分の天文ガイドは、1年12冊を積んで1年ごとに並べると、ざっと二畳分に相当する量だった。見ず知らずの僕によくぞこれだけのものをくれたものだと感謝の気持ちでいっぱいである。Fさんには部屋に入ってもらい、懐かしい話で盛り上がった。
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 御年59歳。今年50歳になった僕よりも9歳年上である。天文に興味を持ったのは小学生の頃にプラネタリウムに行ったのがきっかけだった。当時、アストロ光学の6㎝屈折赤道儀と、15㎝反射赤道儀をもっていた。もともとFさんのお父さんが、子供と一緒に、そういうことを楽しむ人だったらしい。高校時代、大学時代ともに天文同好会に所属して活動した。

 天文ガイドは1965年7月に創刊された。このときFさんは11歳。購入し始めたのはその年の秋からで、それより古いものはバックナンバーとして入手した。以来1995年まで30年に渡って購読したという。今回、実家に積み上げてあったものを「処分せよ」と言われて、車のトランクに入れて持って帰ってきたが、置き場に困っていた。

 思い入れのある本だけに、ゴミとして処分するには忍びない。神田の古本屋に相談してみると、「一応引き取って店頭に置いてみるが、売れなければ廃棄する」と言われた。それで、ネットで「昔の天文ガイド」などのキーワードで検索したら、僕のブログがたまたまヒットしたので連絡をくれたのだと言う。ちなみに僕に断られたら、僕が例の3年分を購入した店を聞こうと思っていたそうである。

 Fさんは、僕が天文に興味をもった12歳の頃に21歳である。あの頃、天文ガイドの記事の、同好会便りとか学校便りなどで大人の活動を垣間見ていた。その年代の人は憧憬の対象だったのだ。あの頃、近所にこんな兄貴がいたらよかったなあ・・・と思うが、実際には落語に出てくる与太郎みたいなのばかりだった。

 少々話が反れるが、本当にいた与太郎を2人紹介する。僕が望遠鏡で月を見ていたら、近所の運送屋の四男(推定年齢25歳:当時)が来て、「俺にもちょっと覗かせてくれよ」と言う。月を見てその人が一言。
「へえ。これカラーだったらもっといいな」
「(テレビか!)」  (心の突っ込み)
月が白く見えて背景の夜空が黒く見えるので、白黒画像だと思ったらしい。
しばらくすると、その人の奥さんが来て、やっぱり望遠鏡を覗いて一言。
「へえ。あれが地球かい?」
「(お前、今どこにおんねん!)」 (心の突っ込み)
こちらはもっとツワモノで、自分が地球に住んでいることを理解していないようだ。全く笑えない天然ボケを2連発でかまされ、全身の力が抜けた。(夫婦としては相性バツグンだけど)

 閑話休題。Fさんの当時の愛機は、屈折も反射も両方とも赤道儀だった。実は僕はかねてから、赤道儀を実際に使ったことのある人に対して聞いてみたいことがあったのだ。それは「極軸ファインダーがついていない赤道儀はどうやって極軸を合わせるのか、合っていないと何が起こるのか」ということである。何しろ、自分の周囲に天文ファンがいなかったので、疑問が生じても聞くことができなかったのである。現在、自分が赤道儀を作ろうとしているので、余計に関心がある。

 答えは「精密に合わせなくても、だいたい合わせておけば赤経軸だけの操作で追尾はできる。ずれてきたときは赤緯軸をちょっと動かして微調整していた」とのことだった。想像してそうかも知れないとは思っていたが、とにかく想像や机上の空論では「たぶん、そうだろう」の「たぶん」が取れない。実際に使った人の話を聞いてみてようやく確信できた。これは大きな収穫だった。

 上記は、たくさんした話のうちのほんの一部で、他にも技術的な貴重な話を聞かせていただいた。ここに書くには細かすぎる内容なので割愛するが、追い追い、別の機会に書くことになると思う。下の写真は1965年7月の創刊号。
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 (Fさん、ありがとうございました。いただいた天文ガイドは、これからじっくり読ませていただきます)
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Mad Scientist

運送屋の奥さんに「nice!」と「いいね!」
by Mad Scientist (2013-06-06 21:51) 

ひぐらし

Mad Scientistさん、こんにちは。この運送屋夫妻以外にも面白い人たくさんいました。たとえば、月が視野からどんどん動いていくのを望遠鏡のせいにする人。これは望遠鏡ではなくて月が動いているのだということを説明しようかと思いましたが、やっぱりやめました。(笑)
by ひぐらし (2013-06-08 13:31) 

モリタカ

昔、星新一さんのエッセイに科学から遠い人という話があり
その中に西から出てきた三日月が南で満月になり東で三日月になって沈むとしんじていた人の話を思い出しました。
by モリタカ (2013-06-15 11:39) 

ひぐらし

モリタカさん、こんにちは。科学から遠い人の話、興味深いですね。つまり、その人にとっては月の満ち欠けなど、どうでもいいということなのでしょう。
まあ普通の人間というものは、興味のない内容は普段考えもせず、思い出すこともないわけですから、記憶に定着するわけもなく、誤解があっても改める機会もない。誤解を指摘されたところで、興味がないので、すぐに忘れる。学習するには、興味がなければどうにもならないことを認識させられる話ですね。
by ひぐらし (2013-06-16 19:03) 

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